IRATAで安全作業に取り組む風力発電事業会社

冬至というのに連日の暖気は風車で働くロープアクセステクニシャンにとっては有難いかぎりです。
今年は「IRATAのロープ高所作業はレスキュー可能で安全だ」という評判がひろまり、風力発電事業会社の保守メンテナンス事業部(4社)の方々がIRATAトレーニングコースにチャレンジし、国際ライセンスを取得されました。
11月19日から始まるコースにも、もう一社4名のご参加が決まっていますが、みなさん普段はスカイボックス等の重機でメンテナンス作業に従事されているので、高いところからロープで下降したことは一度もありません。
それでもIRATAのすごいのは、たった1週間足らずのトレーニングでロープ高所作業に従事できるようになることです。
なぜなら、IRATAの安全ルールの最大の特徴は「作業指揮者はレベル3」と決めている点で、レベル1(初級者)だけで作業することは認めていません。
したがって、現場で直接レベル3から教えてもらうことができ、新人でも安心して働くことができるのです。
レベル3はスーパーバイザーです。安全作業の全責任を負っていますから、働く人は安心です。
北海道の風車で、ロープ高所作業の難しい技術が必要なブレード点検・補修作業がありました。
作業はレベル1 二人が従事するのですが、荷が重いので、事前にビッグロック日吉店で特別訓練を施しました。
そして作業当日、ナセル上からロープで下降してもらいましたが、どんなに訓練を積んでも、はじめて高さ80mの空間に身を乗り出すのは怖いものです。
それでもレベル3が近くにいるだけで作業者は安心です。
作業終了後は計画したレスキューも実際にやって、救助訓練が実施できました。
救助方法はリグフォーレスキューです。
ロワーリング(ロープをコントロールして降ろす)担当はナセル上のレベル1、レベル3は地上から無線で指示を出しました。
救急車が現場に到着するまでに、要救助者をちゃんと地面に降ろすことができることを確認しました。
これなら作業をやらせる側もやる側も、共に安心です。
ご安全に

リギング

リギング 2

初めての下降

初めての下降 2

初めての下降 3

ブレードに作業者が取り付いています。

良い子はマネをしてはいけません。

訓練 救助:負傷して自力で登・下降できない!

救助訓練開始

要救助者を降ろす。

ストッパーノットでASAPの流れが止まる。

ダブルIDで降ろす。

さらに降ろす。

着地

 

 

 

本当はここまで対策を立てないと安全が確保されたとは言えない「墜落制止用器具」の使用

墜落の危険がある高いところで作業するときは、足場のほかに囲いや手摺りを設置して行うのが基本ですが、囲い又は手摺りの設置が合理的でないときは「墜落制止用器具」を用いて作業者を保護しなければなりません。
「墜落制止用器具」は、墜落の危険から作業者を保護するための保護具です。
ただし保護具の使用は、リスクアセスメントのリスク低減対策において、最も低いレベルの対策にほかなりません。
「墜落制止用器具」は最後の砦で、これが抜かれたら即、墜落災害が発生します。
したがって墜落災害を未然に防止するには、「墜落制止用器具」よりも もっとマシな対策(ワークポジショニングやワークリストレイン)を立てる必要があり、「墜落制止用器具」でグランドフォール(地面にたたきつけられること)を免れたのちの救助計画も、同時に必要になります。
安全はご安全に

二丁掛ランヤードは墜落制止用器具の背面のD環にセットするのが一般的だが

胸部のD環に取り付けるのもOK この場足、宙吊りでの快適な姿勢が確保される。

墜落制止用器具は墜落阻止時に発生する危険な衝撃荷重を6kN以下に低減するための保護具

ショックアブソーバーが開くことにより衝撃荷重が低減される(その分 墜落距離は長くなる)

囲いや手すりがない高所では,墜落制止用器具で作業者を墜落の危険から保護するが、墜落を未然に防ぐことは不可能…ではどうするか?

墜落制止用器具の取り付け箇所とは異なる場所に調節型ランヤードを取り付け、ワークポジショニングを講じて墜落を未然に防止する。

安全に完璧はない。ワークポジショニングに失敗する可能性は0%ではないし、失敗すれば墜落する。墜落した作業者は、落制止用器具によって保護される。

墜落して、墜落制止用器具で宙吊りになると、サスペンションイントラレンスの危険があるので、直ちに救助しなければならない。

二人のロープアクセステクニシャンが救助に向かう。

ロープで吊り上げ(ホーリング)て、墜落制止用器具の二丁掛ランヤードを外す計画だ。

白いロープで吊り上げ、伸びてしまったエネルギーアブソーバーに見立てた青いスリングを外す。

スリングが外され、要救助者は二丁掛ランヤードからロープへ移り替わった。

あとは、ホーリングシステムをロワーリングシステムに替えて、要救助者を地面まで下ろすだけ…だが

仮にロワーリングのロープが短くて要救助者を地面まで下ろすことができなくても、下方の救助者がスナッチレスキューに替えて救助を続行することができる。

救助は、コレがだめならアレ、アレがだめならコレ、といった次の一手を考えておく必要があり、臨機応変な行動が求められる。

特殊な高層建築物の作業現場における救助は、消防のレスキュー隊よりも、作業チームのほうが専門でなければならないと思う。

吊り上げと吊り下ろしの救助が容易にできるペツルのジャグレスキューキットは、ひと現場に1セットは備えておきたい救助用具です。

「墜落制止用器具」に潜むリスクと そのリスク低減対策-2

去る7月14日、「墜落制止用器具」に潜むリスクと そのリスク低減対策について と題し、高所作業における救助計画の必要性について論じさせていただきましたが、今日は、墜落そのものを未然に防ぐメソッドについて、写真を用いて論じてみたい思います。
作業計画を立てる際のリスクアセスメントの一助になれば幸いです。

足元にフックがある状態からの墜落(落下係数2の墜落)は墜落の深刻度が最も高い。

周知のとおり高所作業は、手摺りや囲いのある作業床で行うのが基本です。
ただし手摺りや囲いの設置が合理的ではないと判断される場合は、墜落制止用器具(安全帯)を使用して作業者を保護しなければなりません。
墜落制止用器具の使用はコンプライアンスです。
しかしながら法律で定めるところのメソッド、すなわち墜落制止用器具の使用は、安全の最低基準にすぎません。
墜落制止用器具には墜落を未然に防止する機能はありませんから、墜落のリスクを許容範囲まで低減させるには(作業者を墜落させないためには)、ワークポジショニング(身体保持)というさらなる対策が必要になります。
ワークポジショニングには、ワークポジショニング用のハーネス(ボルトウインドなど)が必要で、ランヤードは長さが調節できるグリヨンを使用するのが一般的です(写真はカウズテールを使用)
これにより墜落の可能性は大幅に低減します。
しかしワークポジショニングに失敗したら墜落はまぬがれません。
もちろん墜落制止用器具によってその墜落は止まるのですが、止まった後は長時間の宙づりによるサスペンションイントラレンスの危険があり、ただちに救助しないと危険です。
したがってワークポジショニングを講じたのちも、さらなる残留リスクの低減対策が求められるので、救助計画はないがしろにできないのです。
ご安全に

墜落制止用器具は墜落阻止時に発生する危険な衝撃荷重を6kN以下に抑える保護具

低い姿勢をとるのは落下係数を低く抑える(2から1に下げる)ためのリスク低減対策

端部は墜落の可能性が高い場所なので、墜落制止用器具だけに頼った作業はリスクが高い。

ワークポジショニングで墜落を未然に防ぎ、リスクを下げる。墜落制止用器具の使用で2重の保護