「墜落制止用器具」に潜むリスクと そのリスク低減対策

厚生労働省によれば、来年2月から安全帯の名称が「墜落制止用器具」に変わり、安全帯の構造が胴ベルト型からフルハーネス型へと変更になるようです。
胴ベルト型安全帯には、墜落時に身体に及ぼす重大なダメージの危険性がありますから、より安全性の高いフルハーネス型の採用は、たいへん望ましいことと思われます。

「アブソービカ-YMGO 150㎝」…いわゆるショックアブソーバー付墜落制止用二丁掛ランヤード

しかし、高さ2m以上の高いところで作業するときは、作業床及び囲い等を設けるのが原則です。
法律や規則を持ち出すまでもなく、四方を囲まれた床の上で、人は墜落しません(自殺志願者は対象外)
「墜落制止用器具」の使用は、上記の措置が困難な場合に事業者に義務付けられた規則ではありますが、リスクアセスメントにおいて保護具の使用、すなわち「墜落制止用器具」の使用は、リスク低減対策のヒエラルキーの最低レベルに過ぎず、使っただけで安全が確保されるものではありません。
「墜落制止用器具」は、墜落が止まるときに発生する危険な衝撃荷重を6kN以下に抑えることはできますが、墜落を未然に防ぐ性能はありませんから、グランドフォールはまぬがれても長時間の宙吊りによる生命の危険(サスペンションイントラレンス)があります。
途中の障害物に激突してケガをする可能性もあります。
直ちに救助しなければなりませんが、残念なことには、消防や警察の救助隊に期待するのは困難でなのです。
いろんな問題があって、救助に時間がかかりすぎ、助かるものも助からない可能性が高いのです。
すなわち「墜落制止用器具」の使用の安全は、現場の作業チームによる救助(オンサイトレスキュー)の裏付けが必要だということです。
ご安全に!
P.S  ホーリング及びロワーリング(吊り上げ法及び吊り降ろし法)は、産業用ロープアクセスにおいては中・上級者(IRATAレベル2・レベル3)の技術です。
一般の高所作業に従事する人たちには、ペツルの「ジャグレスキューキット」が使いやすくておススメです。
現場に1個は備えておきたい救助用具です。

二丁掛ランヤードの代わりに赤いロープ2本で、要救助者に見立てたダミーを吊るしています。

長時間の宙吊りは、命に係わる重大な影響を及ぼすので、速やかに救助しないと危険です。

3:1のメカニカルアドバンテージで引き上げています。引き上げる距離はわずかです。

引き上げる距離は、ランヤードに見立てた赤いロープの先端のカラビナを外すことができたら十分

二丁掛ランヤードが外れたら、ホーリングをロワーリングに切り替えます。

すみやかに地面まで降ろすことができて、はじめてリスクが低減したといえるでしょう。

ジャグレスキューキット

一般高所作業のトレーニング

ハーネス型安全帯の使用は、来年から法制化されますが、前倒して使用する事業所が増えています。
5月30日、ビル管理業の方々を対象に、ハーネス型安全帯の使用についてレクチャーしました。
これまでの胴ベルト型安全帯ならば、買って与えるだけでよかったはずですが、ハーネス型安全帯は、ちゃんとしたトレーニングなしには使用できません。
いくら安全な道具でも、使い方を間違ったら、命を落とすことになりかねませんから…

ハーネス型安全帯の組み立て及びシリアルナンバーのチェック

墜落の深刻度についてレクチャー。リストレインは衝撃が発生しない(墜落しない)安全な方法。

衝撃荷重を低減させるフォールアレストシステムでラダーを登ります。

墜落が止まっても背面のD環で宙づり状態になると…!

顔面を打ち付ける可能性が高くたいへん危険です。

リスク低減措置:フォールアレストランヤードを胸部のD環に連結します。

もう一つのリスク低減措置:垂直親綱を張ってアサップロックを使用します。

それも墜落してしまったら救助が必要になる場合もあります。例えば風力発電機

仲間の命は自分たちで守るという姿勢が必要です。

久々に「ロープ高所作業特別教育」

3月19日、トーアスジェット株式会社のロープアクセス訓練施設において、消防官を対象とした「ロープ高所作業特別教育」が開催されました。
公務員は労働安全衛生規則とは無関係だと思っていましたが、霞が関のエライさんに聞いたところ、消防官と警察官と学校の先生は、労働安全衛生規則の枠内の職業なのだそうです。  びっくり仰天!
参加者はレスキューの国際大会に出場するような人達ですから、身体能力は抜群です。
それでも、いろいろと、あらぬことをやらしまくりました。
この講習会が、もしライセンスの認定試験だったとしたら、全員不合格ですね。
国内法は遵守しましょう(笑) わっかるかなぁ…